2020 作品集/Retro Poster
今年25回目となる「手づくりフェアin九州」は、毎年2月にマリンメッセ福岡で開催されている。今年は、福岡でコロナウィルスの罹患者第1号が出た!というニュース(の翌日だった)が飛び交う中での開催だったため、ご来場者は激減したけれど、生徒さんが作った作品はそれなりに多くの人々に見ていただくことが出来た。毎年出展した作品の作品集(写真集)を作っているが、それがこの度完成したので、この機会に出展作品を紹介していこうと思う。
私の教室では、しばしば変わり種?の出品作品を生徒さんに作ってもらうことが多いが、今年も、そんな一風変わった作品だ。
今年のテーマ/レトロポスターについて
今年は、パーチメントクラフトにステンシルを応用して、作品を作ってもらうことにした。
作り方をざっくり説明すると...
- 下絵の絵柄のパーツ毎に番号を振っておき
- クリアファイルなどに、2cm程度に間隔をあけて、マジックでパーツ毎に形と番号を写し取り
- クリアファイルをパーツ毎にカッターで切り抜いて「型」とし
- 下絵の上にパーチメントペーパーをセットし、
- パーツ毎の型を1つずつ、下絵と同じ位置に置いて、テープで固定し
- 型の中にステンシルパステルで着色することで、パーチメントペーパーにステンシルしていく
ステンシルパステルを使用して着色した後は、パーチメントクラフト独自のエンボスや、パーフォレーティング(穴開け)なども加えて、ちょっと変わった作品を作り上げることが出来るのだ。この方法だと、パステルを使うこともあり、少しボーッとしたイメージの作品に仕上がるので、古びたレトロ感満載の「ポスター」を題材に選んだ。
Retro Poster(made with stencil)
- 生徒作品
①「Cafe Europe」
カフェのポスターで、レトロ感がしっかり出ている作品。ケーキは3Dで作られていて、いかにも「モガが食べていたケーキ」という感じが表現されている。シンプルなデザインであるほど、ある意味で難しい作品になるが、ベースに入れたパーチメントで作ったレース模様も、ポスター全体と非常にマッチしていて、センスの良さを感じる作品だ。
②「Winter goods Recommend」
防寒グッズセールのポスター。フクロウの絶妙な色使いがとても素敵な作品。マフラーと帽子の質感も良く表現されていて、体の羽根は手編みのセーターのように仕上がっている。周囲の星が雪にも見えて、いっそう季節感が出ているキュートな作品。
➂「ENJOY TREKKING」
トレッキングを楽しもう、と誘っているポスター。下絵のパーツが全体的にどれも小さく沢山あるが、濃淡をつけて立体的に、丁寧に表現できているところがすばらしい作品。犬の体の質感や表情までが感じ取れ、ご主人様とベストフレンドの犬との信頼関係まで伝わってくるような暖かな作品だ。
④「Jazz Night」
ジャズナイトというサインがとてもクールな、ジャズ・クラブのポスター。ピアノの鍵盤は象牙のように見えるし、ギターは個性的な色とデザインで、全てが洗練された絶妙な色使いだ。そして奥には、パーチメントのレース模様でステージのカーテンが表現されている。So cool!
⑤「LONDON」
都市ロンドンのモダンな観光ポスター。歴史を感じる建物と、モダンな現代建築とが共存する都市を、レトロなドレスの女性が象徴しているようだ。帽子や服の曲線や質感までが、黒の濃淡で非常に上手く表現されていて秀逸な作品だ。
⑥「コタツフェア」
こたつの季節を告げる、和風のポスター。ネコの黒が素晴らしく「ビロードを貼っていますか?」と何人もの方に尋ねられたほど。ステンシルの後、丁寧にエンボスをしているので、これほどの質感と立体感が表現できている。カーテンや手まりは3Dで、細かいところまで丁寧に作られた作品だ。
⑦「Art Aqua」
アクアリウム展のポスターであろう。大胆にデフォルメされた金魚がモダンな印象を与えるが、レトロ感も表現されている作品。そうさせているのは、濁った色合いの独特の赤と金の組み合わせだろう。そこに、直線の黒と、エンボスによる曲線の白が配置されて、素敵な作品になっている。
⑧「Chapeau de bazar」
帽子のバザールのポスター。大きなリボンのついた帽子をかぶった女性の、たおやかさまでが表現されている作品。レース模様の3Dのリボンは3段重ねになっているし、ベースに入れた背景のレース模様は、甘くなりすぎない模様なので、バランスの取れた美しい作品になっている。
⑨「Winter Surf Spot」
冬でもサーフィンができる場所!という観光ポスター。空が夕焼けで色づいているのが、かえって冬場を感じさせる配色になっていて、さらに夕焼けの中の雲が、微妙な色違いで配置されているのも絶妙で、古びたポスター感も出ている。車のパーツや、サーフボードなど細かい部分が沢山あったが、初めての制作でよく表現できている作品だ。
⑩「Coffee」
ただ一言「コーヒー」とシンプルなキャッチのカフェのポスター。全体の色味が同系色のため、印象が薄くなりがちだが、カップと湯気の質感をうまく表現して、全体的にとてもまとまった作品に仕上がっている。「Coffee」の文字もステンシル。背景は×模様を全体にエンボスすることによって、シンプルな構図が、洗練されたものとなっている。
- 講師作品
⑪「WELCOME TO OAK TOWN」
オークタウンという架空の町のポスター。美しく色づく木々に囲まれ、爽やかな風と太陽の光が降り注ぐ、そんな場所にマイホームをもつ、というのは昔から誰もが思い描く夢だ。そんな夢を表現するポスターにしたかったので、できるだけ暖かい色を選んで、配色してみた。鳥が赤い風船をくわえて舞い降りてくる部分は、夢が叶うことを表現して、3Dで最後に配置した。全体として、パーツとパーツの色の境目を美しく仕上げること、隣同士の色が混じらないようにすることなどが、一番苦労した点だった。